わからなかった本の話

いつもぽとすをご愛顧いただきありがとうございます。
スタッフちひろでございます。今回は「読んでも読んでもイマイチよく分からん本」の話をしたいと思います。
本を読んでいて「難しい」と感じたことはあるでしょうか。例えば私が数学や物理の専門書を読んでみたり、急にビジネス書や自己啓発本に手を出したりした場合、「難しくて分からんかった」という状態になります。これは当たり前です。
しかし今回の「わからなかった本」は、いわゆる自分の得意分野の中で起こった、「こーれはいったいどういうこと?」な作品をご紹介いたします。いつも通り勝手に始めます。
日本四大奇書というのをご存じでしょうか。夢野久作『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』の「三大奇書」に、竹本健治『匣の中の失楽』を加えた4作品のことをいうのですが、この中で群を抜いて意味が分からないのが『黒死館殺人事件』です。
タイトルは面白そうですよね? 館モノっていうのはだいたい、脱出不可能な密室で事件が起こったりして、名探偵がそのトリックをビシッと暴いたときの爽快感がたまらないのですが、この『黒死館』、殺人事件そっちのけで、探偵の衒学的な知識お披露目会が続きます。「え?今もしかしてトリックの説明してた?」と、読者は終始置いてけぼりにされるうえ、探偵自身が喋りすぎで事態をややこしくしているせいで、推理は間違えるし、最終的には登場人物の一人にプロポーズ的な言葉をかけちゃったりするんですが、その人が翌日殺されてしまうという、なんかどっかで見たことあるポンコツぶり。まぁ一応事件は解決するんですが、読後感としては、「ん?」ですね。

これと似たような読後感を味わいたければ、ウンベルト・エーコの『フーコーの振り子』がおススメです。この人は記号学者でもあるのですが、『黒死館』に勝るとも劣らない衒学オンパレード。…いや、こっちの方がヤバいかな……いずれにせよ読者に理解させようという気が一切ない鬼畜書です。ちなみに私はまだ読破していません(笑)。
最後にご紹介するのは、私が中学生の時に初読してからまだ理解できていない、おそらく一生かけて読み続けるのかな、という作品、埴谷雄高(はにやゆたか)の『死霊』。全宇宙における「存在」の秘密を追究した傑作ですが、とにかく一文が長く、句点にたどり着くころには、その文のアタマの単語を忘れるレベルです。文章の難解さに加え、「存在」という命題に作者自身が半世紀の間向き合い、未完のままこの世を去った作品ですから、読者もまた、思考の迷宮を彷徨うことになります。これを「わかった!」といってから人生を終えたいものだと思いつつ、今年もまた挑戦します。
最近は、本でも映画でもすぐに「解説」が用意されています。読み終わった瞬間でも、途中でも、検索すれば誰かが「答え」をくれる時代です。もちろん効率的ですが、ちょっと寂しい気もしますね。読書というのはつまり、「わからないまま考える時間」そのものではないか、などと思ったりします。そう考えると「わからなかった本」も案外悪くないものです。
皆さまの「わからなかった本」はありますか? 文章の難解さでも、内容の意味不明さでも、「なんじゃこりゃ!?」な作品がありましたらぜひ教えてください。
ぽとすでは引き続き、「春のジョニーウォーカー飲み比べ」を開催中です。馴染み深いジョニーウォーカー4種をご用意してお待ちしております。

スタッフ 千尋

